1.諸元決定
1-1.全体設計からの要求
例:HPAC-26『Pequod』
①飛行速度 7.45[m/s]→下げるとW数は下がる。上げると風に強くなるが、W数は高くなる。全機抵抗に対する主翼迎角の失速域限界値とパイロットの平均持続可能パワーを相対的に見た良い塩梅値。
②推力 25.6[N]→定常飛行時全機抗力22.9[N]に製作精度損失係数1.15(翼損失1.0724×ペラ損失1.0724、HPAC-24とHPAC-25は製作精度損失係数1.20)を掛けた値。偏流飛行時全機抗力(垂直の有効迎角0°)をカバー出来れば大丈夫。余剰推力が適度な余裕(10-20%)であると良い。
③パワー 212[W]→必要推力×機体速度。ペラ効率90%、駆動効率95%より求める。
1-2.パイロット最適回転数測定
巡航飛行パワー230W一定の場合、負荷レベルを段階的に変えて回転数を測定する。一番心地漕ぎ心地が良い回転数(=トルク)をパイロットに聞く。
表1-1 HPAC-22パイロット最適回転数測定結果

トルク=パワー×回転数、HPAC-22では、24.6〜26.7[N・m](=回転数84〜91rpm)が漕ぎ心地が良い結果となっている。
1-3.その他の諸元
④ブレード数 2[枚]→2枚が安牌。
⑤プロペラハブ・プロペラハブ空力径 0.065[m]→メインフレーム径+7mm、昨年と同じものを使った。1番目のリブは0.080mの位置にあり、ハブと1番リブまでの隙間がかなりのゆとりがある。過去にはカラーがプロペラトルクに負けて変形した事例があった。カラーには、5000番台か7000番台を用いているが、プロペラトルクには対応できない。製法ミスによる良い対応策を見つけるべきである。
⑥揚力係数 0.75→後の解析で決定する。0.70〜0.80の間、最初は昨年と同じで良くてなるべくCL上げ方向に持ってって良い感じに。
⑦レイノルズ数 125,000→一般的に人力飛行機プロペラのレイノルズ数は1~2×10^5と言われている。例年どのReで解析をかければ良いか分からないという理由で、Re=100,000という値が使われてきた。ある年度に作成したプロペラのRe数を見てみると、20,000~150,000であった。その中でも特に揚力を発生させるr/R=0.6~0.8付近は120,000以上である。そのため、Re=100,000にこだわる必要はない。HPAC-26ではRe=125,000の設計とした。
⑧回転半径 1.58[m]→回転半径は大きいとChordが短くなり、細長いプロペラになる。そして、運動量理論より効率が良い。フレーム高さと着陸後の前傾姿勢の余裕を見て決定。
⑨回転速度 120[rpm]→パイロットの快適な回転速度90[rpm]にギア比1.333をかけた。パイロットの快適な回転数に合わせてギア比を決める。
⑩ギア比 1:1.333→パイロットの最適回転数とプロペラの最高効率点における回転数の比で導く。プロペラ効率を最大にしたいなら、ギア比1:1になる。『回転数で最適を見ると、できるだけ小回転の方が効率は上がるが、前進率の最適、トルクの最適には直結しない。よってギア比でプロペラ回転数の最適を求めるのは早計である。』となると、一番簡単な方法は前進率を中心に様々数値を参照しながら設計することであるかもしれない。前進率を1以上にするか未満にするのかで思想は大きく変わる。パイロットの出力するパワーPと回転数n、トルクQにはP=2πnQの関係があることで知られている。よって、パイロットが高回転で必要トルクQを小さい方を好むのか、又その逆なのかによって最高効率点における前進率位置を前後させればよいという考え方である。前進率Jが大きくなるほど、ピッチβが大きくなることが定性的にわかっている。空力的な問題がなければ残るは製法上の問題だけである。
| パイロット思想 | = | 前進率と回転数の関係 |
| 低回転高トルク派(ギア比高め) | = | J=U/nD > 1 |
| 高回転低トルク派(ギア比低め) | = | J=U/nD < 1 |
⑪翼型 SA7038(一般的に使われる翼型:DAE-51、SA7038、SD7037)→
①翼型の特性はどのようなものか・・・空力的観点から見て、翼型は揚抗比(Cl/Cd)のピークは高いのか?その周辺にて急激な効率低下を起こしていないのか?Reの変動で急激な変化を生じていないか?モーメント係数(Cmc/4)の絶対値が大きすぎないのか?様々な速度、Re域、迎角にて翼型を用いるプロペラにて、値域の確認は必須である。
②製作都合上問題ないか・・・構造的観点から見て、製作しやすいか?+翼厚が稼ぎやすいか?の2点を見れば良い。製作しやすいかというのは実際にどの様に作るかによって変わる。例えば、I字桁のカーボンプロペラを作るのであれば、基本は型が印刷できれば多少の表面の複雑さの再現は可能である。バルサペラでは、表面の凹凸、捻れ度合い、スキンの貼りやすさは考慮すべき点である。プロペラの翼厚より入る桁の撓み量を気にして設計を行う。そのため当翼厚の大きい方が使いやすいが、下手に大きすぎると一般的には抵抗が増す。
2.プロペラ設計
2-1.設計ソフトの設定
設計手法としては、Betzの条件、Actuator Disk理論、Blade Element Momentum Theory(BEMT)、Prandtl翼端損失理論、Larrabee法、Adkins・Liebeck法、(Goldstein)渦法などがある。設計ソフトとしては、XROTER、QPROR、PLOP_DESIGNなどがある。私達のチームではXROTER(Larrabee法)を使用している。また、翼型解析にはxflr5を使用している。
2-2.翼型解析(xflr5)
主にこのsectionではRe数を変化させて解析をかける。主な手順を詳しく解説していく。
Xflr5を開いて、左上のFile→Open→翼型.datファイルを開く→Analysis→Define an Analysis→Reynoldsを変更→OK→Analysis settingsのα✓、sequence✓、start=-10°、end=15°、△=0.1°→Analysis→Polars→Current Polar→Export→T1_Re0.100_M0.00_N9.0.txt(Re100,000の場合)をどこかのファイルに置いておく→xflr5での解析終了
次はExcelへの読み込みになる。
Excelを開いて、左上のファイル→開く→参照→T1_Re0.100_M0.00_N9.0.txtを読み込む(すべてのファイルにしないと出てこない)→テキスト ファイル ウィザード次へ×3→読み込み完了→左上のファイル→名前を付けて保存→参照→元のExcelファイルに置き換えて保存
次はExcel内でグラフに書き起こして翼型性能を導き出す。
alpha/CL,alpha/CD,alpha/(CL/CD)のグラフを出す(グラフはRe:125000の場合)

図2-1 CL v alpha

図2-2 CD v alpha

図2-3 CL/CD v alpha
次に下の様な表を作る
表2-1 翼型性能を示す10項目

①ゼロ揚力迎角Zero-lift alpha(単位:deg):CL=0の時の迎角。→CL=0の時のalphaを見ればすぐ分かる。
②揚力係数d(CL)/d(alpha)(単位:/rad):揚力傾斜。失速を含まない。設計者が決める(決まったら青などでセルを塗りつぶししておくと分かりやすい)。→HPAC-26では-4.4~8.1degを揚力傾斜範囲とした。エクセル上で(揚力傾斜範囲の1番大きいalphaのCLセル番号-揚力傾斜範囲の1番小さいalphaのCLセル番号)/RADIANS((揚力傾斜範囲の1番大きいalphaのセル番号)-(揚力傾斜範囲の1番小さいalphaのセル番号))という計算式。

図2-4 揚力係数d(CL)/d(alpha)を求めるためのグラフ
③失速後の揚力傾斜d(CL)/d(alpha)@stall(単位:/rad):失速後の揚力傾斜。設計者が決める(決まったら赤などでセルを塗りつぶししておくと分かりやすい)。→HPAC-26では8.2~11.8degを失速範囲とした。エクセル上で(揚力傾斜範囲の1番大きいalphaのCLセル番号-揚力傾斜範囲の1番小さいalphaのCLセル番号)/RADIANS((揚力傾斜範囲の1番大きいalphaのセル番号)-(揚力傾斜範囲の1番小さいalphaのセル番号))という計算式。

図2-5 失速後の揚力傾斜d(CL)/d(alpha)@stallを求めるためのグラフ
④最大揚力係数Maximum CL:最大揚力傾斜(失速を含まない揚力傾斜内での値)。→HPAC-26では1.1892となった。エクセル上で=MAX(失速を含まない揚力傾斜内でのCL値)という計算式。
⑤最小揚力係数Minimum CL:最小揚力係数(失速を含まない揚力傾斜内での値)。→HPAC-26では-0.3573となった。エクセル上で=MIN(失速を含まない揚力傾斜内でのCL値)という計算式。
⑥失速までの揚力係数増大CL increment to stall:失速までの揚力係数増大分。→HPAC-26では0.121となった。エクセル上で=(失速範囲の1番高いCL値-失速範囲の始まりのCL値)という計算式。
⑦最小抗力係数Minimum CD:最小抗力係数(失速を含まない揚力傾斜内での値)。→HPAC-26では0.0127となった。エクセル上で=MIN(失速を含まない揚力傾斜内でのCD値)という計算式。
⑧最小抗力係数の時の揚力係数CL at minimum CD:最小抗力係数の時の揚力係数。→HPAC-26では0.6532となった。最小抗力係数時のCLを見ればすぐ分かる。
⑨揚力係数の二乗に対する抗力係数の勾配d(CD)/d(CL^2):抗力係数vs揚力係数グラフの二次関数近似式の係数(失速を含まない揚力傾斜内での値)。→HPAC-26では0.004となった。感覚的に凡そ0.002~0.004で落ち着くと思う。
下の図を見てほしい。
1.左のxflr5で出力したデータの横に、また新たに失速を含まない揚力傾斜内でのalpha,CL,CD値を持ってきてほしい。
2.CL(仮)を設計者が間隔を決めて置く(例えば、CLが-0.3573~1.1892の場合、CL(仮)を-0.35~1.12まで+0.05ずつ上げていく)。
3.エクセル上でCD(仮)=最小抗力係数⑦+揚力係数の二乗に対する抗力係数の勾配⑨×(CL(仮)-最小抗力係数の時の揚力係数⑧)^2という計算式で求める。

図2-6 揚力係数の二乗に対する抗力係数の勾配d(CD)/d(CL^2)の求め方
4.次にグラフを作成する。CL/CDとCL(仮)CD(仮)のグラフ2種類を用意する。そして2種類のグラフを合体させると以下のグラフのようになる。
5.揚力係数の二乗に対する抗力係数の勾配⑨を変化させて、オレンジと青のグラフがいい塩梅で重なるようにしていく。そしたら完成。

図2-7 揚力係数の二乗に対する抗力係数の勾配d(CD)/d(CL^2)を求めるためのグラフ
⑩レイノルズ数Reference Re number:上記の性能時のレイノルズ数。→HPAC-26では125000となった。
2-3.AEROコマンド(xroter)
主にこのsectionでは、翼型解析によって出した数値をxroter側へ打ち込む至ってシンプルなものである。
xroterを開いて、aero→editと打ち込むとaero dataを打ち込む場所が出てくる。そしたら1→①のデータ→2→②のデータ→3→③のデータ→4→④のデータ→5→⑤のデータ→6→⑥のデータ→7→⑦のデータ→8→⑧のデータ→9→⑨のデータ→10→⑩のデータ
翼型情報入力完了

図2-8 翼型性能を示す10項目の入力画面
2-4.DESIコマンド(xroter)
主にこのsectionでは、プロペラ諸元をxroter側へ打ち込んでプロペラの形状を決定するものである。
Enterを2回押してxroter c>に戻る。desi→inpuと打ち込むとプロペラ諸元を打ち込む場所が出てくる。下のように数値を埋めてあるものだけ入力すればよい(青く塗りつぶされたセルはプロペラ回転半径である。この値を変化させて比較する。)。
表2-2 プロペラ諸元

このプロペラ諸元を入力していくと、下図のようになる。

図2-9 プロペラ諸元の入力画面
ここからenterを押すと、プロペラ形状や諸元が出てくる。

図2-10 プロペラ形状
2-5.翼根側揚力係数変更
このsectionでは、翼根部は翼弦長が非常に小さく桁が入らないため翼弦長を大きくする必要がある。そのため、翼根の揚力係数を小さくして計算し直す。
DESIコマンドで出てきた数値は.EDIT Parameter, Value (or ) c>→CW→自分の機体名_CL_V1 で保存をすることで、回転半径位置ごとのCLを保存できる。

図2-11 回転半径位置ごとのCL保存画面
保存したデータを右クリック→メモ帳を編集から見れます(左:r/R,右:CL)。

図2-12 回転半径位置ごとCL
そうしたらエクセル上にHPAC-26で使っていたフォーマットを出すと、桁が最大どのくらいの大きさはいるのかという値が出てくる。この時点では、黄色のセル部分が最大Φ11.6244までの桁が入ることになっている。Φ14の桁を入れるには全然足らない。
また、回転半径rごとの翼弦長cの図、回転半径rごとの揚力係数CLのグラフも出しておいてほしい。

図2-13 どのくらいの桁が最大入るかを示した図

図2-14 回転半径rごとの翼弦長c

図2-15 回転半径rごとの揚力係数CL
図2-12の右側の根本CLをグラフが滑らかに繋がるように各翼素の揚力係数を変更させる。

図2-16 各翼素の揚力係数を変更させた図
変えたファイルはコピーをして、例:Peqoud_CL_V2やPeqoud_CL_V3などバックアップなどを取っておくといい。そしたら、xroterにぶち込もう!

図2-17 CL変更したデータをxroterへ読み込む方法
そしたら、再度プロペラ形状を表す諸元が出てくるので、必要な部分だけコピーしてエクセルに貼り付けよう。そして、回転半径rごとの翼弦長cの図、回転半径rごとの揚力係数CLのグラフを出そう。

図2-18 プロペラ形状を表す諸元をxroterからエクセルへコピーした図
最終的にはこうなった。

図2-19 回転半径rごとの翼弦長c 完了版

図2-20 回転半径rごとの揚力係数CL 完了版

図2-21 回転半径rごとの翼弦長c 初期形状と完了版の比較
2-6.翼根側翼厚比変更
このsectionでは、構造がパイプ桁の予定のため最大翼弦長の翼厚に通せるようするために、最大翼弦長の翼厚と同じになるように翼根側の翼厚比を変更する。
まずは、翼根揚力係数変更完了データの横に下図の赤枠で囲った部分のように入れていく。

図2-22 翼厚変更するためのデータ
[セルに入れる数式]
1.翼厚変更→桁径+桁径からリブ外形まで(mm×2)+外皮厚み(片側mm×2)。一番大きい桁が入るところが17.7775だとしたら、そこから根本側は17で良い。

図2-23 翼厚変更数式
2.thickness→翼厚変更÷翼弦長c。HPAC-26で使っていた翼型SA7038の通常翼厚比は、0.092(9.20%)なので、それ以下は全部0.092(9.20%)にする。

図2-24 thickness数式
3.thickness ratio→thicknessを%表示したもの。HPAC-26で使っていた翼型SA7038の通常翼厚比は、9.20%(0.092)なので、それ以下は全部9.20%(0.092)にする。

図2-25 thickness ratio数式
4.RE×10^3→xroterから出力されたRE数を10^3した値。

図2-26 RE×10^3数式
5.r/R→xroterから出力された値。
そしたら、xflr5を開いて、使っている翼型を読み込み、Design→Scale camber and thickness(翼厚変更)を開く。ThicknessのValueにさっきの9.20%より上(翼型SA7038の場合)のthickness ratioを1つ入れる。OK,OK,Yesを押す。

図2-27 xfir5でのthickness変更操作
そしたら、Analysis→Define an Analysis(レイノルズ数変更)を開いて、Reynoldsをthickness ratioに対応するものに変更する。

図2-28 xfir5でのReynolds数変更操作
そしたら、エクセルにこのように貼り付け、2-2のように翼型解析を行っていく。翼厚が変わっている部分を繰り返し同じ手順で行っていく。

図2-29 thickness変更後翼型解析
全ての解析が終わったら、翼厚変更したものを組み合わせしていく。xroterを開いて、loadで、翼根側揚力係数変更したものを読み込む。AERO→NEWで回転半径位置ごとに翼型情報を追加できる。

図2-30 翼型組み合わせ
翼型情報を追加していく。

図2-31 翼型組み合わせ完了
最終的にエクセルで貼り付けておく。

図2-32 翼型変更完了後
⚠このまま計算すると翼根側が失速判定になったため、計算できずTry againになりxrotorを落とすしか方法がなくなる場合がある。ここまで書いたが、失速判定になる場合は翼型情報は変更せずに次の翼根側のピッチ角変更後に翼型情報を変更して再計算する。(翼根側は半径70~80%と比べるとほぼ空力に影響しないため無視してもよいという考えから)

図2-33 翼根側失速判定
2-7.翼根側ピッチ角変更
このsectionでは、翼根側は回転速度がほぼないため推力がほぼ発生しないが、余計なトルクが発生してしまうため翼根CL=0時のピッチ角にすることでトルクを最小限にする。
これは先輩が書いたスライドを参考にするのが一番早い。


2-8.最終形状
この表を作成し印刷をしておくと、トカゲ書き、リブ接や桁接をする上で優位になる。

図2-34 最終形状
これらを終了すれば、空力設計は完了である。お疲れ様でした(_´Д`)

