はじめに
飛行機が空を飛ぶために最も重要な力が揚力(Lift)です。一般には「ベルヌーイの定理によって飛行機は飛ぶ」と説明されることがありますが、航空工学ではそれだけでは揚力を十分に説明できません。この記事では、ベルヌーイの定理とニュートンの運動法則の両方から、揚力の発生原理を解説します。
揚力とは
揚力とは、翼に働く流れに対して垂直方向の空気力です。飛行機が水平飛行するときは、L=Wとなり、揚力 (L) と機体重量 (W) が釣り合っています。
ベルヌーイの定理
流体のエネルギー保存則であるベルヌーイの定理は、
で表されます。ここでp:静圧 [Pa]、ρ:空気密度 [kg/m³]、V:流速 [m/s]、g:重力加速度 [m/s²]、h:高さ [m]を表します。
飛行機の翼では上下の高さの差が非常に小さいため、ρghは無視できます。すると、
となります。この式から、流速が大きいほど静圧は小さくなることが分かります。
翼では何が起こっているのか
翼型では、翼上面を流れる空気は下面よりも速く流れます。ベルヌーイの定理より、
- 上面:流速が大きい → 圧力が低い
- 下面:流速が小さい → 圧力が高い
となります。この圧力差が翼を上向きに押し上げることで揚力が発生します。しかし、「なぜ上面の流速が速くなるのか」まではベルヌーイの定理だけでは説明できません。
ニュートンの第三法則
翼は空気を下向きへ曲げています。すると、運動量が変化した空気は、翼へ逆向きの力を及ぼします。これはニュートンの第三法則「作用・反作用の法則」によるものです。つまり、
- 翼は空気を下へ押す
- 空気は翼を上へ押す
ことで揚力が生まれます。ベルヌーイの定理は圧力差から、ニュートンの法則は運動量の変化から揚力を説明しています。実際には、この2つは互いに矛盾するものではなく、同じ現象を異なる視点から表しています。
揚力の定量的表現
実験や理論解析により、揚力は次式で表されます。
ここで、L:揚力 [N]、ρ:空気密度 [kg/m³]、V:飛行速度 [m/s]、S:翼面積 [m²]、CL:揚力係数です。また、
を動圧と呼び、揚力は
とも表せます。
この式から、
- 速度が2倍なら揚力は約4倍
- 翼面積が大きいほど揚力は増加
- 揚力係数が大きい翼ほど揚力が増える
ことが分かります。
まとめ
揚力は翼に働く上向きの空気力であり、
- ベルヌーイの定理による圧力差
- ニュートンの第三法則による反作用
の両方から説明できます。そして航空工学では、最終的に
という揚力式を用いて、翼の性能や飛行条件を定量的に評価します。飛行機だけでなく、人力飛行機やグライダーもこの原理に基づいて設計されており、限られたエネルギーで効率よく飛行できるよう工夫されています。

